中国シルクロードの穴場的見どころや人々のくらしなどについて書いていきたいと思います。のんびりと更新していきたいと思いますのでときどきのぞいてくれると嬉しいです。
Vol.002 故郷の春節
もうすぐ中国では春節(旧正月)です。
今頃は私の村でも、春節を迎える準備でみんな忙しいことでしょう。まずどこの家でも飼っているブタを殺します。もちろんまるまると太った大きなブタですから、一人では殺せません。三、四人でブタ小屋へ入ってブタを押さえつけ、縄で縛って外へ引きずり出します。村にはたいていブタを殺すのがうまい人がいて、ふつうはそういう人にたのんで殺してもらいます。ブタ殺しの人はお礼として肉をもらうのです。
こうしてブタはむだなところ一つなく解体されます。ほとんどの部分は食用ですが膀胱はオシッコの臭いがしみついているので食べません。そのかわり空気を入れてボール状にし、子供たちのおもちゃになります。
いよいよ春節が近づいてくると町へ野菜を買いにいったり、門に対聯(おめでたいことが書いてある一対の長細い紙)を貼ったり、門におめでたい図柄の絵を貼ったりします。家では初一(1年の最初の日という意味)に食べる油菓子を作り始めます。油菓子はかたいクッキーのようなものですが、花とか鳥とか兎などの形につくります。この形はきまりはなく、家々によって違います。
そして大年(日本でいう大晦日)の夜は家族で餃子をつくって食べます。なぜ餃子を食べるのかは、餃子のつくりの「交」が、年が交代するという意味に通じることからという説も聞いたことがありますが、ほとんどの人は由来など興味なく、長年の慣習として餃子を食べています。
こうして新しい年を迎えるのですが、その際にかかせないのが爆竹です。大都市では危険防止のために禁止されているところもありますが、農村ではおかまいなしです。闇の中、村じゅうのいたるところから響いてくるすさまじい破裂音を耳にすると、ああ新しい年を迎えるんだなあという気分が高まってくるものです。
こうして春節を迎えて夜は更けていくのですが、この夜は寝ないと長寿になるというならわしから、いまでも年長者で夜通し酒を飲んだりおしゃべりをして朝を迎える人は少なくありません。
初一の朝はさきほどの油菓子をたべてゆっくり過ごします。この日はなるべく外出しないようにします。なぜならこの日は1年間働いたすべてを休ませるということから、道も踏まずに休ませてあげるという考え方があるようです。子供たちは祖父母や両親にきちんと新年の挨拶をし、圧歳銭(お年玉)をもらいます。
初一の夜も餃子ですが、この餃子のアンの中にはコインが入っているものがあって、それにあたった人は、その年は儲かるという縁起ものです。ただ、コインは入っている確率が高いので、ほとんど全員が口の中でカチッという感触を味わうことになります。
こうして春節は二日目あたりから親戚や友人などが、たがいに新年の挨拶に家を訪問しあってのんびりと過ぎていき、15日の元宵節に湯元という甘いアンの入った白玉を食べて春節は終わります。
農家にとって春節は一年の労働の骨休めのたいせつな時期であり、春節から数えて何日めに畑の土を起こすとか肥料をやるとかを決めています。これが旧暦がまたの名を農暦というゆえんです。ですから、わたしの村ではほとんどが農家ですので、新暦の元旦はたんなる国の祝日の一日としかとらえてません。春節こそいまでも中国人にとって真の年越しなのです。
中国各地にはそれぞれ春節ならではのしきたりや催しがありますので、その時期に中国を訪れるのもおもしろいかもしれません。ただし商店街や観光地はほとんど全面休業で、ゴーストタウン化していることを承知のうえできてください。
それではみなさん 祝 新年快楽!
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